読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

新選 吉増剛造詩集(1978年)の詩論、「王国ノート」を読む

 おはようございます。

 

 吉増剛造さんの詩を読んでいきたいと思っていますが………図書館から借りてきた………

 

【詩集など】 

新選 吉増剛造詩集(1978年)

八月の夕暮、一角獣よ(1992年)

吉増剛造詩集(1994年)

続続 吉増剛造詩集(1994年)

「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」(1998年)

吉増剛造詩集(ハルキ文庫 1999年)

花火の家の入口で(2001年4月)

燃えあがる映画小屋(2001年5月)

剥きだしの野の花(2001年7月)

The Other Voice(2002年)

長篇詩 ごろごろ(2004年)

天上ノ蛇、紫のハナ(2005年)

機――ともに震える言葉(関口涼子 吉増剛造 2006年)

詩学講義 無限のエコー(2012年)

 

【関連する本】

吉増剛造論(小野満 1984年)

討議 詩の現在(城戸朱里 野村喜和夫 2005年)

展望 現代の詩歌Ⅴ(2011年)

 

  本を眺めているだけでなにか知識が増えたような気になりますが………「新選 吉増剛造詩集」(1978年)に載っている詩論や解説(詩人論)をまず読んで行きます。

 

「王国ノート」と題されたエッセイは――『王国』という詩集を書くときの、言葉を探す苦しみから始められています。

  • テーマも、モチーフもそこにありそうなのに初めの一行が見えてこない、苦悩。

「王国」の第一行はまだみえていない。

   死の王国を呼吸する

   死の王国を呼吸する

 右のような無惨な二行をくりかえし、約十日を過ごした。くりかえしてもくりかえしても 詩行は生きてはこない。しかし、ぼくはこの死語のように無惨な詩行に呪縛されはじめる。「呼吸する」という言葉のなかに、ぼくは「詩を書く」という意味をメタファーとしてこめているらしい。「死」という言葉の使いかたがもとより安易だ、じつに安易だ。第一行がつねにここからしか発生しないのはなぜだ。再び題名として決定している「王国」という言葉だけにもどってくる。

   王国の

   第一行は天皇にはじまる

   渚に恋人が

   走ってくる姿が美しい!

 なんとか歌おうとしているのはみめるが、かろうじて呼吸音は聞こえてくるのだが、最初の二行には無惨な滑稽さをさえ感じさせて、反古となり詩行たちまち消えてゆく。王国と天皇が衝突して、あるいは第一行という意識が強くですぎて、最低限の意味をさえなさない。王国に恋唄をうたおうとする意図(もとより漠然とした)だけが、ぼくだけに暗号を読むようにつたわってくる。これではダメだ。

   王国の

   中心におれの恋がある!

 右のように書きかえる。

 こまた無惨。(P102)

 

のようにエッセイを書き始められています。

 正直な苦悩のように思います。

 何かを描きたいのだが、まだ、イメージとして確定していない。その意味も捉えられていない。わかっていない。そういう状態………

 P103では、「なぜ『王国』なのだろうか。」と自問自答しているのです。

 半島状の大陸につながる想像力………

「なぜ『恋』なのか。」

 唯一絶対ともいうべき美しさ………

 

 そして、

王国の

雪なおふりやまず

燃える白馬につづき

王国の崖を疾駆する黄金列車!

朝に

壊滅的な雪ふり

黄金列車は雪崩のなか、数千の黄金列車は雪崩のなか、先祖の墓を積載し、老婆のなんという白い肌を印象させ、黄金列車は谷底へ転落する

王国の

 

………

………

 という詩行を作り出すのですが………

 

イメージが自分のなかで確定するのです。そう思います。

 

………………     ………………     ………………     …………………

 

 じっさいは、詩集『王国』(河出書房新社 1973年)では………

   「黄金列車」

 一行の燃えたつシャーマンににて黄金列車がアメリカを狂ったように疾駆して東海岸にそそりかち、消えた、ああ 一行の燃えたつシャーマンににてこのモンゴルの種族は既に幽鬼のごとく青ざめてそそりたち、消えゆく言葉の砂漠にそそりたち、これは青ざめて幻の王国を回想する頭脳の破片である、しかし生命は一行の夢であり、一行の燃えたつシャーマンであらざるをえず、かろうじてふりそそぐ流星をしてあらゆる言語を吸いこません! 流星文字を吸いこむ、夢は直立するたった一つのオアシスにして知らず、黒色の大天空に死者が顔をのぞかせているのがみえている! ………

          ――略      (P27)

 

というふうに、多数のイメージが混在する王国を疾駆する黄金列車に変わっています。描きながらイメージが増殖して定着してゆく………

 

「恋」のイメージは、アメリカを呼び込んだのでしょう。

 2連は

アメリカ

おれはのぞきこむ、おまえの眼だ

おれはのぞきこむ、おまえの死角だ

アメリカ 

と歌われます。

 

 最終部では、

アメリカ

あるいは一つの死角、かがやきわたる

白色のアメリカ、頭脳の体に

ふたたび凄絶な美しさをうつしてかがやきわたる!

おお

黄金列車 

 で、終わります。

 イメージが変遷しています。というか、核は同じですが。モチーフとして選ばれたものが違う。黄金列車がアメリカを走っていることになっている。シャーマンが出てくるのはインディアンを思い起こさせます。

 

 詩を書くのは苦しいことでもあるし、想像し、創造する楽しみを持つことでもあるように思います。

 

………………     ………………     ………………     …………………

 

 読んでいただいて、ありがとうございました。

 誰もが、穏やかで、平和でありますように。