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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

詩を読むことは旅すること

 おはようございます。

 詩集「わたしはあんじゅひめ子である」から詩を選んで読んでいます。

 今日は「見失った子」を読みます。

 詩らしい詩といったら語弊があると思いますが、詩というイメージで思い浮かべるような易しい言葉で書かれた詩です。ただ、日常使う易しい言葉で書かれているからといって、単純な詩とは限らない、深い真理が平易な言葉で描かれているということがあるので………そう思うのです。

 

コドモを見失ってしまったのでわたしは動物園に戻りました

 

大きな動物園でした

わたしは切符を買って入り口に立ちました

すみませんがとわたしは切符切りのヒトに聞きました

髪の黒い青いコートを着たコドモを見ませんか

見ませんねと切符切りのヒトは言いました

わたしは動物園の中に入りました

 

ゾウのうんこがありました

 

おおきいゾウはおおきいうんこと一時間前にコドモが言いました

これはコドモが絵本で覚えたことばです

ゾウを見たことがないときからコドモはゾウのうんこについて知っていました

一時間前に見たのはコドモの人生で四度目の新鮮なゾウです

さらに新鮮な子ゾウはこないだ生まれました

まだ一般公開されておりません

立て札には公募してつけられたなまえが書いてありました

さっき読んだのでわたしはそれを知っています

 

アニーちゃんです

 

すみませんがとわたしはゾウを見ているヒトに聞きました

 

髪の黒い青いコートを着たコドモを見ませんか

見ませんねとゾウを見ていたヒトは答えました

わたしはカバの檻へ行きました

 

カバはいませんでした

 

………

………

 

というふうに、コドモを探して動物園を巡る話です。

 

 こういう詩は好きです。

 リズムもあるし、何かを探すことが人生を象徴しているようで、身近に感じるからです。

 詩を読み進んでいくと、子どもが成長して、生きることを学んでいくんだなと理解できるからです。

 

 童話のようです。

 また、寓話といえるかもしれません。

 

 ゾウ、カバ、アシカ、シロテナガザル………それぞれの檻の前で、わたしはそれを見ているヒトに、コドモを見かけませんでしたか、と訪ねます。

 自分の子どもは、結局最後まで見つからず詩は終わってしまいますが………

 読者としてはそれでいいのです。作者に連れられて、動物園という生物界の旅をしたのですから。

 これは真善美というような芸術の目標を目の前に広げる詩ではなく、体験させる、共動するために描かれた詩だと思えます。

 

P72

ニホンのカゴシマ産ナベツルは檻のきわまで来てヒトビトを見ていました

 

わたしは夜行性動物の檻に行きました

そこは夜でした

人工の夜でした

 

砂漠の夜の中でオオミミギツネが行ったり来たりしていました

砂漠の夜の隣はタスマニアの夜でした

タスマニアの夜の隣は東南アジアの密林の夜でした

照明はしすぼんやりしていて

樹の上にいるモノの正体は不明でした

わたしはそこにいたヒトに話しかけようと

するとばさばさと音がしました

白いヒトの顔

白いフクロウの鼻のない顔が飛んでいたのです

あれが人面フクロウとそのヒトが連れていたコドモに言いました

色の白いコドモを見ませんかとわたしは聞きました

色の白いコドモなら爬虫類両生類館の前で見たような気がとそのヒトは言いました

明るい外に出て

わたしと爬虫類両生類館に行きました

そこは高温で多湿でした

 

 最後にシロフクロウに会うところで詩は終わります。

………

一羽がこっちに背を向けたまま首をくるりと回転させてこっちを向きました

それはヒトの笑い顔によく似ていました

でもヒトにしては頭が丸すぎました

それからまたくるりと回転させてあっちを向きました

それからまたくるりと回転させてこっちを向きました

やっぱりそれはヒトの笑った顔に似ていました

食いかけのシロネズミの死骸が足元に落ちていましたがとっくにひからびていました

それでシロフクロウはまたくるりと回転させてこっちを向きました

 

 この160行余りの詩で、ひとつの旅を終えた気分になったのです。

 

 

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 読んでいただいて、ありがとうございました。

 これで伊藤比呂美さんの詩を読むのは、いちおう区切りをつけたいと思います。来週は、いま読んでいる本の感想を書きたいと思います。

 

 今日が、誰にとってもよい日でありますように。