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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

不条理の世界

 おはようございます。

 詩集「わたしはあんじゅひめ子である」から詩を読んでいます。

 今日は「犬語の練習」を読みます。

 

 これはカフカ的世界です。

 あるいは不条理劇といってもいいかも………吠えもしない、声も出さない犬にずっと話しかけるという詩です。

 

声の出ない犬をひろいました。わたしは犬の耳に向かって言いました。

「おまえはもともと飼い犬だ。呼べばこっちを向くから飼い犬だ。おい犬(こっちを向いた)。ほらおまえは飼い犬だ」。でも、犬はうんともすんとも言いません。 

 という静かな書き出しが発端なのですが………ことは危険な状態になってきます。

「わたしは犬を飼ったことがない。わたしは猫は何匹も飼った。わたしは猫が好きだ。猫は静かだから好きだ。吠えない犬なら飼ってもいいと思っていた。人間と同居したいというなら、犬は、声帯を摘出しなくちゃいけない」とわたしは犬の耳に言いました。

「声帯を摘出してみたらどうか」とわたしは犬の喉を撫でながら犬の耳に向かって言いました。犬に触った手はとても臭いので、わたしは手を洗いました。

「吠えも唸りもしない犬が、この世の中にいるとは思わなかった。でもあまえがそうだ」とわたしは犬の耳に言いました。 

  その後、

………わたしは犬のしっぽをふんづけました。犬はだまってとびのきました。「おまえはふんづけられても口を使いたくないんだ」

わたしはまたふんづけました。犬はだまってわたしの足を咬みました。「理想的な犬だ、おまえは」とわたしは犬の耳に向かって言いました。

 吠えはしないが黙って足を咬む、そういう犬が理想的かどうかわかりませんが………犬との交流が、虐待することでしか、できない世界かも知れないです。 

 

 そして猫と同じように去勢しようとします。

「おまえを去勢したい」とわたしは犬の耳に言いました。犬は何にも言いませんでした。

「おまえの生殖器を切り取らせてください」とわたしはかさねて言いました。犬は何にも言いませんでした。

 そして、

口を、しゃべることに使わない犬は、食べることにも使いませんでした。「食べなさい」とわたしは犬の耳に言いました。わたしは、牛乳を犬の前に置き、卵黄を置き、肉も置き、そのたびに、「食べなさい」と口で犬の耳に向かって言いました。犬は食べませんでした。………

 

 水を一日数回しか飲まない犬は弱っていきます。

「おまえの口はとても臭い」とわたしは言いました。「息をとめるか顔をそむけるかして、おまえの口臭を嗅がないようにしているのについ嗅いでしまう。吐きたくなることもある。わたしはそのににいを嗅ぎたくない」とわたしは犬の耳に言いました。

「臭い口は切り取ってしまえ」とわたしは犬の耳に向かって言いました。

犬は横たわって、目をつぶっています。犬の肋骨が浮きあがっています。わたしにはもりもりと食べたい食欲があります。わたしは食べものを用意しました。「役たたずの口」とわたしはものを食べながら、犬の耳に向かって言いました。

「咬みつくしか能のない口、役たたずの口、臭いだけの口」食べながらわたしは言いました。「そんな口は切り取ってしまえ」

犬の耳にわたしは言いました。「切り取らせてください、おまえの口を」

 

 

 長い引用になりましたが………状況は悪化していきます。

 犬の蚤がわたしの皮膚に湿った穴を空けていきます。蚤が走る耳を、切り取ろうとします。

「蚤の走る耳も切り取ってしまえ。おまえの耳を、わたしに切り取らせてください」

「おまえの口も切り取らせてください。おまえの、口から胃や腸につながってゆく管を、わたしに切り取らせてください。そんなものは切り取ってしまった方がいいんだ」犬は何にも言いませんでした。

「おまえの生殖器も、耳を澄まそうとする耳も、切り取らせてください、わたしに」とわたしは言いました。

 

 結局、犬は死んでしまいます。

 でも最後にわたしは残った耳に向かって、それが腐って溶けてなくなるまで、話しかけ続けるのです。

 

       ………………     ………………       ………………

 

 コミュニケーションの不全の物語といっていいのだろうか………

 こういうカフカ的世界は、なんとでも解釈できる要素を含んでいます。また、それぞれの解釈でいいのだと思います。物語を楽しんだらいいのです。

 

 こういう不条理の設定の詩も魅力的だと思うのです。

 

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 読んでいただいて、ありがとうございました。

 今日が、誰にとってもよい日でありますように。