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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

現実と描写をつなぐもの

 おはようございます。

 詩は〈現実〉と〈描く主体〉都の関係ですが、そのあいだをつなげるものとして、空想とか幻想、あるいは妄想やドラマがあると思うのです。それを鈴木志郎康の詩集から拾ってみます。

 

詩集『少女達の野』から 

 

汚雨が現象している雲と地面の間の
その地球の人間の生息する表層を
彼女の皮膚から引き剥がして
そこに
オレは赤ん坊になって
唇寄せる

           (「オレの側と極小の黒烈光」部分)

 

 

 これは、不思議な幻想を描いたような詩です。

………

丁度、女体の秘所から脇腹へと詩人たちは小
人になって登って行った
わが前頭葉映画だ
行列を追い越して右に曲がると、横たわる美
女のへその辺りが
ある詩人の借りている部屋であって

………            (「その夜」部分)

 

 

から
風が吹いてくる
その海へ
船を作って出て行く人がいる
    美しい船だ
    美しい船だ
    美しい船だ
歌われる言葉に誘われて
船を作って

波切る胸
波切る乳房
おまえの双つの乳房を
海が掴んでいる
兄だから
ただ見ているだけだ
海がおまえの
双ぶ乳房を掴んでいる
丘には斉唱が流れている
    すすきが光る
    根元で人の骨を抱いて
    すすきが光る
    葉先でトンボをあやして

           (「東廻り」部分)

 

 

「乳房のレジェンド」は寓話のような詩です。1~4の部に分かれて物語りを構成しています。

 

(「2 知識の乳房」部分)

 

………

姉は困惑する
既に婚約者の子を身籠もっていて
文字を恐れる
胎児と文字との何という恐ろしい距離
うむがやすし
風が吹き始めた夕暮れだ
殺される人の夕暮れは悲しく
殺させた人の夕暮れはこころ急く
火を焚く宴の始まり

………

 

 

  (「傾斜の気分」最初部分)



「詩人に収入を聞いてはならない


午後0時3分
「しっぽい男が、だ めだって、はしっこい

「顔が小さくて鼻ばかり大きい女はどうしよ
うもないじゃないか

午後0時18分
「陥没してしまったんだ
(その部分が全体的に。「現象」下の支えがなくなって、時間的にズレが生じて。〈感想〉 これはどうしようもなく価値論的な思考にとらわれていることによる認識の喩的な発語である。)

午後0時39分
食べ終えた

………

 

詩集『石の風』から

 

窓の外は既に
暗く
初老の男は自分の身に覚えをなくしたように
机の上の書かれた文字の
意味も取れず
立つこともせず
母が、まだ生きていて若く
遊びから帰った子どもの自分に
ふだんのままに
呼びかける自分の呼び名の
その母の声を、耳もとに聞いて
涙ぐむ
いない母はいない

………

         (「帰り着くこともなく、手にさわる風の」部分)

 

 

 

何故、女が醜い顔を通り過ぎるわたしに向けて
人が突っ立つべきでない
立ち入り禁止の
夏の
炎天下に
空き地の雑草の中に
立っているのか
堅い棒杭のように
 立っている
  堅い棒杭のように
   立っている、醜さを晒して
    堅い棒杭のように
台風が来る前だから
積乱雲がソフトクリームを思い浮かべさせる

………

           (「逃れた所」部分)

 

 

 

 

 (「時間を通り抜けているから、頭が潰されそうだ」最初部分)

 

霰の音に
明けやらぬ朝の
白い粒が弾ける瞼の裏に
冷たく映る
死んだ自分が
地面に頬を寄せている
そんな息子の横たわる仕方を
疾うの昔に死んだ母は知るよしもなく
今、時間を潜り抜けているから、頭が潰されそうだ
地面の広がりは
胃に応える寂しさ
俺に似た犬がいるって
野良犬じゃないけど
飼い犬にも見えない
ヌボーって

………

 

………

わたくしは、女のように、まくれる裾を押さえる。
同じ電車には乗るまい。おおげさな決意で
自らが演じるドラマが、にわかに、始まる。

        (「不意の、他人の存在」4連部分)

 

 

………

彼女の色白の裸体に、
青と黄色の絵の具を塗りたくりたい。
はけの感触が彼女の皮膚を刺激するだろう。
興奮して震える裸体を身近にして、彼女の興奮をわたしは感受するに違いない。
興奮は漸進する。
興奮は伝播する。
わたしの意識は自分の身体の働きを抑えることができなくなり、自らの興奮に埋没するだろう。手で、彼女の肌に絵の具を塗る。
彼女は声を出すだろう。
そのときのわたしたちの行為の目的は、生きた事物の美的実現だが、
声を発した彼女の快感は、わたしの手から生まれることになる。
彩られた彼女の裸体は、美的実体として、
時間を切断し、
空間を切り取る。

………

         (「前の三日、後ろの三日」部分) 

 

 

  描写はそれだけでも詩になりえると思うのですが、〈現実の変容〉を受け入れ、感じ取ることが、より、詩に深さをもたらすと思うのです。

 

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 読んでいただいて、ありがとうございました。

 また、明日。