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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

詩作法────過去、幻想、心理を現実の描写に入れ込む

 おはようございます。

「続・伊藤比呂美詩集」を読んでいます。

 P10に掲載されている2番目の詩「日の光のように輝く白猫」の詩作法を考えたいと思います。

 出だしは────

 

ときどき耐えられないくらい喉が乾く

水を飲む

ごくごく飲む

臭いをたよりにそれを探す

ぐるぐるまわれば容易にみつかる

でも高いところにあって手がとどかない

………

わたしは男の髪の毛をかきむしりながら言った、一時的な(9行目)

感情の洪水は、ぜったいに長くつづかない

わたしは男の唇を強く吸って言った、キスは

とてもすてき、性交は

とてもすてき

わたしは髪の毛を………

  1行目~8行目までは現在、現実の情景の描写です。

 9行目からは〈過去の出来事の記憶〉が入ってきます。その時、思った〈自分の心理〉も書かれています。

 

わたしは男の唇を強く吸って言った、子どもたちは(17行目)

森のたき火のそばで眠っている

そこにはうちの猫がいる

こどもたちのことはだいじょうぶ猫が見ててくれる

だいじょうぶちゃんとお菓子の家を見つけられる

パン一切れ与えてやるのも惜しいくらいだ

うつくしく育った子は殺してしまえば心臓がおいしい

でも、と男が言った、男の子は

ふりかえって

猫を見ている

早く歩けと親たちが言うけれど

うちの白猫を見ているんだと男の子が言う

でもそれは太陽が煙突にあたって光っているので

猫はいない

日の光のように輝く白猫はどこにもいない、と

自分の思い出を語るように男が語るので

どこにもいなかった白猫が気にかかる

  17行目で突然〈子どもたち〉が登場します。そして〈猫〉も登場します。

 これは作者の〈思い浮かべるおとぎ話のような幻想〉なのですが、男も参加してきます。〈自分の思い出を語るように男が語るので〉(32行目)と書かれてあります。それでこの幻想が作者だけのものか、男も共有しているものかわからない曖昧な領域のものになっていると思います。

 

 タイトルにもなっている〈白猫〉はなにかを象徴しているのでしょう。

 いずれにしても、女、男、子ども、猫、白猫が登場してドラマを形作る準備ができたわけです。

 現実の描写で始まりながら、作者の過去の出来事や、その時の心理や、幻想が、入り込んできて、意識の流れ的手法で描かれることが詩を作っている、といえます。

 

男の抜け毛がふりかかっていつももつれた(51行目)

わたしは抜け毛をあつめて

いとおしく思いながら燃やした

胎児たちは何人も何人も受精された

わたしたちはだまってそれを見ていた

言うことは何もなかった

男は棚の上に箱を置いた

その中には詩がはいっていた (58行目)

  抜け毛は=胎児でしょうか? 51~58行までは、また現実の描写に帰っていています。

わたしは窓から外を見ていた(59行目)

     ↓

男の力で

窓はいきなり開けはなたれて(63行目)

そこにあった花瓶がいくつも倒れてこなごなになった

そこにとまっていた蝿も潰された

そして風が吹きこんできた

わたしの抜け毛たち

わたしの胎児たち

わたしの掻爬たち

わたしの箱たち(70行目) 

 71~79行は〈わたしは窓から外を見ていた〉と、また反復します。

 そして〈窓は いきなり開けはなたれて〉(75行目)、花瓶が倒れて、〈蝿も潰され〉〈風が吹きこんで〉、〈部屋を荒らし〉

 

向かいの建物の煙突の上で

輝く白猫が前足をなめているのが見えた

 で終わるのです。全部で81行の詩でした。

 

………………       ………………       ………………

 

 つまりこの詩においては、現実の描写のなかに、過去の出来事や、幻想、意識下の心理が入り込んできて、並列的に描写されています。

 

 重層的な心理の状態が描かれています。

 登場するすべてがメタファーだといってもいいと思います。何を象徴しているのかは明確にはわからない。読者に委ねられているのではないでしょうか。

 

 


 3月6日のブログに、井坂洋子の詩について書かれている部分があります。

    • 現在の視点で語られるところと
    • 過去の時間の現在形で語られるところ
    • あるいは人間以外の視点

    が、混じって並列されて描写されているということです。 

    こういう「入れ子構造 」によって、重層的な心理が描ける、ということなのだと思います。

………………       ………………       ………………

 

 

 読んでいただいて、ありがとうございました。

 また、明日。