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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

「生きのびろ、ことば」から

 

生きのびろ、ことば

生きのびろ、ことば

 

 という本を読んでいる。

 それぞれの詩人が、言葉について書いたエッセイ。前書きに、小池昌代が……… 

 執筆者はみな、詩を書いているひとたちで、言葉を、世界を見る特殊レンズのようにして使う。それぞれ、屈折率と拡大率が違う。論考ごとに、日常が、世界が、違って見えてくるはずだ。ものの表面をおおっていた「あたり前」の皮膜が、一枚、まず、ぺろりとむける。一枚、もう一枚と、さらに深く、世界をむいていくのは、これを読む、読者の役目である。

と、書いている。うまく書くものだ、と思う。

 詩もそうでないか。読者の役割が大きい。読者が思い入れて読まないと、詩だけでは、自律できないのではないのか………

 詩は、読者との共同作業だ、と思っている。

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………

 〈笑い〉「悩める東京タワー」平田俊子

………東京タワーの詩を今日中に書かなくてはいけないのだ。………

 テーマが東京タワーだということは、四ヶ月も前に連絡があった。時間はたっぷりあったのに、まだ一行も書けていない。東京タワーの詩を書く必然性がわたしにないからだ。でも、必然性がないからといって書けなくていいものか。歌人俳人は、歌会や句会で、与えられた題で作品を作るではないか。必然性がないことを言い訳にしては行いけない。必然性なんてものは書いているうちに見えてくるのだ。東京タワーか。難題だな。でも、テーマはいつだって難題なのだ。

 ということで始まったエッセイは………じつは………

 生きている限り人には悩みがつきまとう。お昼に何をたべようか悩み、体重が増えて悩み、仕事のことで悩み、友だちとの関係で悩み、友だちができなくて悩む。すべての悩みから解放されるには死んでしまうのが手っ取り早いが、どうやって死のうかまた悩む。

 が、最初の文章で、「わたしの目下の悩みは東京タワーだ。といっても東京タワーをかついで歩くわけではない。」と、続いて、「東京タワーの詩を今日中に書かなくてはいけないのだ。」につながる。

 

 このエッセイは───

  • 歌人の石川啄本さん、若山牧場さん、前日夕暮さんが、短歌の朗読会を開いていて、自分がゲストで呼ばれている、同じテーマで詩を作らなくてはならない、ということ。
  • 以前、東京タワーにのぼったことがあること。若いオトコと、だった。この調子だと、三回目は五十歳以上若い子と………
  • と、妄想したりして、「年下の男」と「東京タワー」を俳句に使うと、十七文字の大半が埋まってしまう、と思ったり、短歌で、年下の男とのぼったらおりたくないというので置き去りにしたとか、高いところはいやだというので地下に………とか、途中でその子はエッフェル塔になりました、とか………「哀愁の東京タワー」という歌があったとか、テクノバージョンと演歌バージョンがあったはずだが………と、
  • 昔、観光地にいくと「努力」とか「根性」とか書かれたペン立てや温度計が売店に並んでいた、そういうの東京タワーにも山ほどあったんだろうとか、
  • 小野十三郎の「重油富士」や深尾須磨子の「ひとりお美しいお富士さん」など、富士山を書いた詩はいくつかある、と思ったり………
  • 世の中には詩人がたくさんいる。これまでだれも東京タワーの詩を書かなかったとは考えにくい。わたしが知らないだけで、きっと書いた人はいるのだろう。と考えたり、………タワーラ万智さんも書きそうだな。とかんがえる。
  • 東京タワーの俳句はごっそりある。たとえば久保田万太郎の………
  • 短歌には笑えるものが時々あるな。土屋文明の「馬と驢と騾との別を知りて………」とか。この歌の舞台は中国………
  • 「穴子来てイカ来てタコ来てまた穴子来て次ぎ空き皿次ぎ鮪取らむ」、これは小池光の歌だ。小池さんは回転寿司屋のカウンターで、上流からやってくる皿をチェックしてる。………佐野朋子はその後無事にころされただろうか………
  • 笑える短歌はあるけど詩はどうだろう。わたしが面白いと思うのは、たとえば………
  • これは入沢さんの「アルボラーダ」という詩集に入っている。「カルボナーラ」ではない。………賢治の作品や生涯をもとにした川柳もある。「たびたび病んで 夢はポラ野をかけめぐる」という、………
  • 以前、入沢さんのこの詩と川柳を伊藤比呂美にメールで送ったことがある。すると「どこがおかしいんじゃ」という返事がきた。うう、何でおかしくないんじゃ。………
  • 伊藤比呂美に笑いのセンスがないわけではない。………同情と共感と敬意が入り交じった笑いを、読者はこの詩集で体験する。笑いというより、泣き笑いに近いかもしれない。
  • 笑いを含んだ詩は意外に少ない。たまにユーモアのある詩が見つかる程度で、ほとんどの詩は真面目な顔をしている。これはどういうわけだろう。詩人は笑いが嫌いなのだろうか。
  • 自分の詩が………できれば自分の死後も読まれたいとひそかに願っている。それには忍耐力が必要だ。笑いの要素が強い詩は、………一度笑われたらそれでおしまいということになりかねない。………
  • 哲学的な示唆に富むもの。心を豊かにしてくれるもの。闇を照らしてくれるもの。そういう詩を人は求める。「きょうは笑いたい気分だから詩を読もう」、そんなふうに思う人はまれだ。生きることと切実に結びついた詩を詩人は………詩における笑いは、取り扱いに注意が必要だ。
  • おっと、話がそれてしまった………東京タワーの詩のことを、略して東京タワー詩という。売店では赤と白の東京タワシを売っている。値段は333円だ。………ワタシタワシワタシタワ。………わた詩タワ詩渡詩たわ。
  • そろそろ頭がほぐれてきたから、東京タワーの詩に取り掛かることにしよう。詩を書く前はとりとめのないことをあれこれ考えるのがわたしのやり方だ。馬鹿なことをたくさん考えながらぼんやりと対象を眺め、詩の大体の構図を決める。そのあとは書いては消し、書いては消しの連続だ。………

というのが、長い引用の要約です。

 詩を書く前の助走。

 ごめんなさい、長い引用で………

 

 なぜ、このエッセイに興味をもったかといえば、モチーフを決めなければ始まらないという途上にありながら、どう、モチーフにせまるのか、どう自分に迫ってくるのかを、あれこれ書いてあるからです。

 自動書記的な、連想記述的なエッセイの書き方は、手段的な意味もありますが………、モチーフを決めかねている逡巡が描かれているのを狙ったメタエッセイでもあり、それがおもしろかったのです。

 

 詩が出来上がる過程には、いろいろなことがあるんだな、と思わせる。

 また、いろんなことがあって、作者が狙ったことだけで完成されるものでもない。読者的視点も入り込んで、ああでもないこうでもないというところで、形式的に出来上がってくる。

 もっと完成体の形みたいなものを、勉強しなきゃあと思わせるエッセイだったのです。

 

 

 また、明日。