読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

詩のスタイル 3

17【単純・明晰・堅牢】

     鏡面

[1 薄闇の中に/まっすぐな男とまっすぐな女が立っていた 2 曲がった男が遅れて来た\転がる煌きを携えて 3 太陽は…… 4 まっすぐだった女は二つに折れて……

5 私の心は道理至極 6 だが私は察てしまったのだ……]

  • 二人の男と一人の女の関係……
  • パロディにする心理がある。それが現代。
  • 説明になってはいけない。

 

18【内部と外部】

     続「崖」

[1 サイパンの女は死ねない。……吊るされている。 2 彼女らは叫ぶ しかし……3 血はすべて流れ去った…… 4 そして 子供が生まれ……苦しみ始める。 5 女は自分の幸せは欲しない。子供だけはと…… 6 オリンポスの神々は……頭を垂れる。 7 噫 ミューズは自らの手で…… 8 水を絶ち 米を絶って 三十年……死骸で満ちている]

  • 作者の外部体験と内部経験の問題が表現に表れる。オリンポスの神々が出てきたのは……西欧の観念に逃げ込んでいる。体験が自己の内部とどこかで結びつかなくては。

 

19【ライトヴァースの魅力】

     Long Western Road

[1 バスの窓からのぞいていた小さな首が ふいに ころげ落ちた……幸福だった日々は 過ぎた……おてては残った 2 凝視ていた瞳はバスを乗り越して 今 長い西の坂を降りて行く]

  • Light Verse だからといって、通俗だといえない。そのスタイルが日常会話的で、日常的なシーンから発想された詩がライトヴァース。
  • 日常のなかでの詩との邂逅。

 

20【戯作の精神】

     男色的日本考・ハンコ押し的色版画

[1 めくるめく桜月 ざわめきて……日暮れる 2 ひぐらし啼くセミのおもちゃに……3 何は無くとも江戸紫は病鉢巻の…… 4 凄絶これなる…… 5 化けても出よか…… 6 狂えるメディアの 信じられない…… 7 と、たたえよ…… 8 真夏のオバケも では登場…… 9 ドウサ引きしくじったらば 滲み出し…… 10 オバケよ 今宵は 眠れそうにもない?]

  • 風刺。テレビに登場するエロ、スキャンダル、あの手この手。
  • 戯作調があまりに安っぽい。下卑てしまった。ただ、小細工の腕は達者である。

 

21【感情のベクトル】

     猫背の弁明

[1 猫背だね と云ったら 空気が重いんだ と彼はこたえた 2 俺の視線に耐えきれなくなって 空気は……背中にへばりつくんだ 3 目をふさげば救われるのだが……えぐるナイフも 持ってはいないのだ]

  • 対象に対する視角=ベクトル。
  • この詩では方向は、感情のベクトルで表される。空気が重い……不思議なリアリティである。感情のドラマが示されている。

 

22【省略の美学】

     都市

[1 最大無関心が昂じて 都市ができた 笑い声は死刑ものだよ 2 人々は怒ることも忘れ…… 3 命ばかりはお助け下さい…… 4 冷徹なコンピューターギロチンは…… 5 吐きだされたツバに……けげんな顔つきで…… 6 ツバはなまめかしくうごめいている…… 7 都市には 枯尾花が咲きほこり 8 やがて 9 ……人々は気づきもせずその跡をふんでゆく]

  • 著者は都市の日人間的な環境の中で、ツバは=言論、と読んだ。言論の自由が無視されている現状をパロディ化していると。前半の緊張が、後半の枯尾花できれたようだ。
  • 「極端にいえば、モチーフとか、テーマとか、そういう観念的なものはなにもなくても、眼前にある事実を、これでもか、これでもか、とカットしていったら、みごとなミクロの芸術が成立することになるかも知れない」

 

23【「詩」と「真」の課題】

     小さき者ら

[1 小さき者らは無造作に その一日を使い果たし……白き花を摘んでいる……罪することを知らぬゆえ……傷みを知らず……摘んでいる 2 いま 私がそれを求めようと 拒もうと……私はすぐにかなしくなり……捧げられた 白き野花!……神聖な営みをすら横目に 歩みはじめる……生の落日]

  • 作者は、宗教的な真実の予定調和に到ろうとしている。リルケも「ドゥイノの悲歌」を書くまで、宗教的真と詩的真を同じとみなしていた。

 

24【非具象の詩の魅力】

     Aeon

[1 存在するということに堪えてきたのか……わたしが払うべき代償は…… 2 何かがそこにあって…… 3 この時が 無限でないという意識のために……忘れていた]

  • 作者はただ、ひたむきに問を発した。叫びのような言葉だけを発したのである。
  • 宇宙、存在を考えている……自分の内面だけを表現しているという意味で、非対象の詩と読んでもいいと思う。

 

25【自己確認から自己発見へ】

     さよならを言うには早すぎます

[1 さよならを言うには早すぎます そう、あの角をまがってからにしましょうね…… 2 笑った 笑いましたね ほんとにやさしい笑顔ですね…… 3 ……こんなにうかれてしまうのは あなたのしたいは汗ばんで……心地よさそうだ 4 ……春は何をくれたんですか 5 えっ 何ですって……もう少し大きな声で]

  • 人間には見えないものがある。もっとも見えないものは自己かもしれない。
  • 愛する人に出会った時の、とまどい━━━内部の声━━━それによる自己確認━━━最後は、あなたへの問というより、宇宙への問いかけとなっている。

 

26【構造への視点】

     時計の音

[1 時計の音が カチカチと部屋の中に響き……その音はかろやかに夕陽を僕に投げかけ 2 だけどその音は座標軸ではなく……ぼくの心を思いの方向にのみ志向させ 3 だからこそその音は……笑わねばならない 4 ならばその音は僕の一部なのだろうか……永遠に奴隷なのだ]

  • 音を捉えようとしているのだが、作者はそれを、「その音がつくりだす空間」と感じている。
  • 終わりが平凡である。理に落ちすぎていて、響いてこない。

 

27【不可視なるものへの透視】

     背中の見えない糸

[ぼくがいつも電車に乗る駅には急行は止まらない。それで遠くへ行く時には一度東京まで行ってそこから戻ってくることがある。……それから、この前、よく自転車で通る道を走ったときにも同じ様な気持ちになった。……そのときに感じたのは……ずっとそれが続いているのではないか……気配すらない。……いくら動きまわっても後には何も残らないのだ]

  • 見えないものを見ようとする試み。違う場所にいるときも、同じ様な意識になるという謎━━━最後でそれは明らかになる。それは、存在の不条理という感覚。それを体験するのである。詩に表現することによって、それは「経験」となったのである。

 

28【シンプルな情念】

     堕堕

[とうめい色のどろぬまの中を ゆらありひらあり と おちていく……底に見えているのは……目をつむっても……にげられないぬまの中]

  • 昔、多くの敵が外部にいた頃は、書かれるものは叙事詩出会った。現代の詩はほとんど個人の内面を表現する抒情詩である。感情を表すにはシンプルな方がいい。すっと入っていけるイメージが大事だ。
  • 詩のモチーフは、そうざらに転がっているものではない。受動的にしか訪れてこないモチーフを、どのように能動的に転化するのかが、大切である。

 

29【内的欲求の表現】

     What I want

[1 きみは 間断なく おしゃべりすることで きみのくちを 閉じようとしている 2 けれど ぼくは 知っている……3 着飾ることで……おおい隠そうとしている…… 4 ぼくの欲しいのは…… 5 皿に……その上のきみは 焼きたての ビーフステーキだ 6 そして きみは 知っている……ぼくの欲しいのは…… 7 甘い言葉など……ジッパーをおろしはじめる]

  • 戦前は性の欲求は簡単に満たされなかったが、これは戦後の性を偽らずに表現したものである。女の媚態と男の欲望。
  • 形式として繰返しを使うのは、詩を構成する能力が高い。対比法も使っている。逆転の手法も。手際よく作った作品でエロスが欠けているのが惜しい。エロスの思想がないのである。

 

30【メルヘンの世界】

     愛について

[1 その昔 人魚姫は 大きな水蓮の木の下で…… 2 夏の終わり 真珠採りは…… 3 賛美歌の谷間で……最後の吐息のようにして……子供の心にも……鎮魂歌が響きます 4 晩秋の風は吹きだまりをつくるため……いちょうの葉がないのです 5 ……それは 貴方の所にあるのですか]

  • メルヘンの世界は宗教的であり、人間以外の世界があるのだという認識は、他者の認識、自己の認識に返ってくる。
  • この詩は、現代的なメルヘンを描いている。宗教=アガペーの愛、である。「吹きだまり」という言葉をメタファーとして効果的に使っている。場面がシナリオのようにはっきりしていることも、素晴らしいイメージを生み出している。

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………

 以上で、「現代詩創作講座」の、様々な詩のスタイルのまとめを終わります。

 興味を持てなかった方は、ごめんなさい。明日、ぼくの感想を書きます。