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  66歳 日の記し /          ☆。(´・ω・`)/ 。゜★・ ☆彡

社会の底辺で生きて来て55歳で世間と断絶を決心してから独りです。寂しいのでブログを始めました。思うことなどを書きます……仏教を生きる指針にしているのでそれも。リンクを貼らせていただくサイトの方には感謝しています。m(_ _)m

詩のスタイル 2

8【視覚的イメージ】

     二〇世紀末の不安

[誰か キリコの絵の中の───鏡の中 私 彼には実体はあるが───幾何学の世界 夕陽───絵の中の世界も 現実界も───キリコの世界と鏡の世界は───朝 私は どこにも 存在していない]

  • 詩は語る絵画。
  • この作品が詩となる理由は、最初の「救いを求める声」にある。
  • 視覚的イメージは、観念的な言葉では表現されない。
  • 詩は言葉と志=心であろう。心のおもむくところへ行く、それが抒情。

9【アクチュアルな詩の魅力】

     1975年9月30日

[今日午前9時30分、天皇皇后両陛下は───アナウンサーが報ずるテレビの───タラップの手摺りにつかまりそろそろと───昇り終わってこちらを向き───おれ、戦後民主主義の申し子───おれの意識は父母の代まで後退する───見送りの人波の───背後の事情が何であれ───おれは苦言を呈さねばならぬ───厳正かつ巨視的に展望せねばならぬ───その時まで、祖父母の神───どうか道中御無事であれ]

  • 思考や感情をただ並べただけでは、詩にならない。日常的なものが詩に高まる瞬間を捉えなければならない。
  • 皮肉(アイロニー)で、語句を逆の意味で使用するのはいい。

10【細密描写の魅力】

     水疱

[それは奇妙な光景といってよかった。私がバス停に向かって歩いているとき、───水路の表面に、いちめん、数知れない小さな輪が立っていた。細い水路は───ただのドブだったから、不快が積極的な満足に変わる可能性もない。───墨色の表面にたしかに白い円が勢いよく昇って来て、───ガスの発生を、───むやみに暗い気持になっていた。───水疱は汚泥層からだけでなく───その時バスが来た。───おたまじゃくしの棲むドブから離れた]

  • 細密描写の魅力にあふれた作品である。描写でひとつの美を作る。
  • 映像と作者の内面がなんらかの理由で重なりあった。誘導しあう。
  • 細かな観察と描写が、非凡な表現につながる。

11【コラージュの魅力】

     ナインポンド・ハンマー

[夏が過ぎたので、僕は17になった。燃えていた太陽でまばゆいイエローに塗られていた空気を、───僕はまづしい雑沓を歩み続けた。(街の描写)───おじいさんはつぼをくれた。───とり落としてしまった。───街があった。少女たちが───張り詰めて、はりきって───17の頃は傷つこうと願った。───ハンマーを握った。……街を打ち砕こうと思った](この詩は4連でできています。1街を歩く2坪を貰う3幻の町4ハンマー)

  • コラージュによっていくつかのイメージをつなげている。連想の隙間を遠くしたり、近くすると、おもしろい効果が得られる。
  • 基本的に、心象風景でできている。
  • 街、少女に対する意識のドラマ。

12【イニシエーションの詩】

     成長

[1 屋根は北極星カシオペア、オリオンの真下に…… 2 頬をこおばらせて息を殺し……はは はいつもそこにいる……背中まで裸にしていたのだ 3 歯をガッカガッカ鳴らしながら……同心円の天を……爪がははを突き刺すのはいつか 4 天にちりばめてはいけない](連番号を打ってみました)

  • イニシエーションとは(1開始、創始2入門式3奥義伝授)の意味。
  • 1連は屋根=人類の象徴、人間の内部へ。2連は、生の起点である母。3連は存在の縦軸と空間が比喩されている。

───という解説がありました。ぼくとしては、深読みとしか思えない。観念的な割に表現が稚拙だと思う。こういう詩は好きではない。

 

13【想像力と意味】

     内なるヒトラー

[第二次大戦中のことである。ドイツ軍兵舎の一室……裸のユダヤ女が横たわっている。……犯していく。……監視兵が居て、それを見ている。/ 妄想のアウトラインである。……若干の肉付け……人妻であったり、処女であったり……ドイツ兵にはたいがい、善玉がひとり混じる。……「私たちを赦してくれ、聖女のような心で……戦争のせいなのだ」と。……たいていは首を横に振り、冷たいまなざしで……/ ところで、妄想の作者である私は、常にまた登場人物でもあった。……悪玉を演じた時も、しばしばその後で私は……善玉になった……/ この妄想から解放されて間もなく、……また、同様のことが、日本兵によって……これらの事実は奇妙にも、別に私を驚かせなかった。……そのことに、私は慄然としたのであった]

 

───ここで著者は、詩ではなく、「想像力」の定義について、エズラ・パウンドの言葉で解説している。「単なる欲望の充足によってその意味のはたらきを失ってしまうような言葉は使うべきではない。なぜなら〈文章〉とは欲望の表現では無くて、意志の表現にほかならないからである」

 著者は、その「想像力」は詩のなかでどう働いたか、善と悪が同化することなど、解説している。そして日本軍がしたという犯罪───を知った、作者のショックについて「別に驚かなかった」という二重のショックの、現在性について語る。

 

「皮相なヒューマニズムにもたれかかった薄っぺらな詩だなあ」というのが、ぼくの感想。───詩の作者はたいがい詩を書くことで、いい人を演じるものですが━━━真実を抉る、その志が、詩を書くということ、ではないのか? だれもが批判できないような、建前の思想や観念を前提で、詩を書くなら、現実にもたれかかっている、と批判されてもしかたないだろうと思うんですね。この場合の現実は、戦後教育によって無意識に受け入れてきた自虐的な反戦思想です。すでにナチスの犯罪と日本兵が同列に描かれています。いま、中国が日本を批判するのに使っているロジックと同じです。当時の世相の反映もあり、しかたないのでしょうけれど……なんか社会主義リアリズムの、党派性優先の詩のようで、プロパガンダのために奉仕している卑小性を感じるのです。

 著者も詩の内容に踏み込まないで、粗筋だけを取り上げています。

 まあ、詩を書こうという人は、昔、左翼系の人が多かったから……そして、左翼的思想が正義だと信じ込んでいたのです。

 

 14【比喩と寓話】

     おばあさんと私

[私はおばあさんが死んだ時を知っていました。……おばあさんは私の髪を一本ひき抜いて 言いました……髪はヒイヒイ泣き声をたてました。おばあさんはそれをチュルチュルのみこむと……電灯のきれた部屋にはオウムが一羽。……ある時青い鳥───それはオウムでしたが───を手に入れました。……彼は死んでしまいました。……それから……私は孫を呼びにやりました。……その子もやっぱり18歳! 私は光のちらちらする髪をみました。……「お前はいい子だねえ」]

  • 髪の暗喩で象徴しているもの。生のシンボルである青春に他ならない。
  • 私───孫のダブルイメージが効果的。

 

15【繊細の精神と感受性】

     糸

[1 ぼくはせまい身のまわりのかごに入っていて……むすばれている糸に かごはささえられていた……2 いつからだったろう? 3 となりにもいた! ……おちていく人もぼくはみた……刀で糸をきって! ぼくは自分の手が刀を……4 ささえてやることも できなかった……5 だれもみな 今はぼくに糸をきるようにすすめる……しかしぼくはのびあがって……どうせなら枝から……]

  • ミノムシを連想させるような、生き物。繊細さが描かれています。
  • 生命のメタモルフォーゼ。糸を切ること→地獄へ……
  • 素直な計算のない感受性で表現している。

━━━この解説も、深読みのような気がする。詩が表現としては素直過ぎるせいか、よけいな概念の解釈を詩の解説に援用していると思う。

 

(この本を、こんなに詳しく読んだことはなかったけれど……投稿してきた詩の作者は若い人ばかりなのだろう、と思う。また詩に対して素人であるからこそ、読んで、学べるところがあるのだが……)

 

 16【イデオグラムの魅惑】

━━━表意文字イデオグラム)と表音文字(フォノグラム)だそうです。こんなサイトを見つけました。(かってなリンクですみません)

 

     屠牛

[1 ゆわえられる牛老いた牝牛は……いやいやをして体をよじる 2 卯女のほそうでが……小さな刃を首にあてると……3 理解しようとしても理解いたしかねること……4 浅喘をたもってまだ事切れぬ気丈な牛は……しだいに暮れかかる西空は すると血の色に染まって闇を呼んだ]

  • 漢語の文体から発想している。
  • 人間と獣との殺し、殺される歴史がある。

 

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 今日はここまでにします。

 途中ですこし書いたのですが、完成された詩を取り上げているわけではなさそうです。現代詩を読み慣れている人にとっては、未熟ともとれる投稿詩でしょう。だから、いろいろ考える余地がある。参考になる、から、この講座が本になったのでしょう。現在から見ると、詩のテーマが古臭い、のは時代のせいでしかたないのでしょう。

 

 では、明日また。